TPPに参加すれば、アメリカの言いなりとなって(もちろん従前からそうだったが)、不効率な農業はもとより、保険や金融、医療も消費者のお財布にやさしい制度に生まれ変わると私はあっけらかんと思う(もちろんそんな楽観的な態度は一部の人々からバカ、無知と攻撃されることは知っている)。 今問題になっているのは、たとえばTPP参加すれば、アメリカの遺伝子組み換え食品とか、抗生物質漬けの牛の肉とか、農薬まみれの米が安く大量に入ってきて国民が癌で死ぬリスクがあがる話。関税も、日本のいろいろな規制も全部アメリカ様は邪魔だと言ってるから取っ払われてしまう。 しかし、これまで日本政府は、農業も金融も国民の税金を使って過保護にしてきた。そのせいで日本の食費は高止まり。金融だって消費者を本当に利する商品は一切出ず、ただひたすら機関投資家のビルばかりが立派にそびえる。いくら安全だからって、借金一千兆円になるこの期に及んでまでそこまで農業だの金融だのに無駄金突っ込めないだろう。政府がTPP参加に傾くのはもうこの際だから不効率な部門はすっきりしたいっていうハラもあるはずだ。 私もそれは賛成だ。次世代に負担を残す国債を発行して、これ以上不効率な部門へ公金を片寄って流すのは止めていただきたい。山口県とかいってみて、農家があまりに立派で驚いた。御殿である。もちろん、ここ小金井市でも、広大な土地に御殿のような家屋敷を構えるのは農家である。そして彼らは、金に困るとうまく地所を処分して、賃貸アパートを建て、そこへ若者を住まわせる。若者は高齢の農家のじじばばに、年金を払い、家賃も,高齢者支援金も、介護保険も払う。しかしその若者が高齢農家を支える原資も残念ながら雇用不安と給料が上がらない件で風前の灯火である。 もう無理なんだ。地方交付金とかで、あるいは付け焼き刃な対策で年金や医療を支えるのは。地方の豪邸住まいの農家を都心の若者が支えるのは。 だからいっそのこと全部アメリカに駆逐されてしまえばよろしい。マスコミも外資規制を取っ払ってもらって、日本のテレビマスゴミもつぶれればいいと思う。 TPPで、社会保険加入義務のない超安いインドネシア産のメイドや、格安医療が入ってくれば、地方に建つ豪邸は医者か農家という歪んだ日本の「光景」もすっきり片付くだろう。 住宅の建設コストだって高すぎる。大前研一