倫理や道徳とは無関係な増殖するシステム

倫理や道徳とは無関係な、増殖するシステム。これは何のことかというと、株式会社のことである。

株式会社の本質は、株主総会で決議される繰越利益剰余金の分配の仕分けに見出すことができる。(利益準備金や預り金は割愛)

借方 繰越利益剰余金 貸方 未払配当金

実際に配当金が支払われるのは当座預金口座からである。

借方 未払配当金 貸方 当座預金

売り上げから利益を差し引き、納税したのち、その会社のオーナーたちつまり株主たちは、最後の利益剰余金からどれだけ自分たちに配当するのかを株主総会でつまり自分たちだけの打ち合わせで決めることができる。

株主たちは、当然の権利としてつまり、その事業のリスク引き受けの報酬として配当を受け取ることができるわけだが、彼らの頭の中には、その配当の原資となる利益が、どれだけの労働者や地球環境に負荷をかけて出てきたものなのかは、一切関心がない。彼らの関心は、今般のこのリスクテイクのプレミアというか、報酬がいくらなのかだけだ。

私が簿記の本を初めて読んだのは今から十数年前だが、その時はへーと思っただけだった。しかし先日娘に簿記をやらせいようと、入門書を読んでいたとき、私は重大なある事実に気が付いた。

株主たちには、この世の中の労働者や、女性や、子供など弱者のために、あるいは持続可能性に赤信号がともるこの地球の長期的な未来のために思いをはせることは、一ミリたりとも期待されていないという事実である。

彼らに期待されているのは、出資金を払い込むこと。そして、毎期、株主総会に出て、自分の分け前を決めることである。

要するに、彼らが倫理道徳的に正しい判断を日々行う理由が、この株主資本主義では規定されていない。存在しない。

これって絶対にまずいと思う。

株主は、だんだん、この仕訳、たった一個のこの仕訳に、すべての関心が集中するようになる。なぜならば、生き物たる人間のデフォルトは思考停止であって、脳がエネルギーを消耗する「考えること」はなるべくしないで済むように駆動している。

この仕訳さえ考えとけば、あらかたうまくいくと思って後は趣味のゴルフだの、麻雀だの、旅行だの、そういうので時間をつぶせばいいだけだ。

そうした有様こそが、株主の真の姿といっていい。

恐ろしいことだと思う。この社会のど真ん中にあるものは、倫理や道徳とは無関係な増殖するシステムであった。仕訳は一切の感情や道徳を持たず、欲望だけが理由の株主たちの配当の議決で決まっていく。くわばら。

まあしかしここで、唯一よかったのは、この新型コロナウィルス感染症のせいで、もはや株主たちはおそらくかなりの割合で、配当のもとになる利益剰余金が残らない世界に突入しているということだ。

これで彼らは考えるようになるだろう。あの愉快で、それさえ押さえておけば完ぺきだった仕訳、借方利益剰余金、貸方未払配当金は、もはや死ぬまでお目にかかれないのかもしれない。だったらなぜかを考え始めざるを得ないだろう。

頑張って考えてほしい。私はもうかなり前から考えていて、それはベーシックインカムしかないという結論だ。これさえ受け入れてもらえれば、またらくちんな思考停止状態に戻れる。彼らにも悪くない提案だろう。

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