なぜ世界はよい未来に向かって行動出来ないのか

なぜか。まず政治家の都合。

「増税せずに収入を増やしたいという願望」→成長神話にしがみつくほかに、自分たちの次の当選はおぼつかないという現実。

次に、私たち社会の都合。ひとりひとりが、前世紀にエドワード・バーネイズにより発明された広告による消費プロパガンダにより、「物を買えばあたらしい自分になれる」信仰に骨の髄まで、しかも多世代にわたりどっぷりと浸かったままである。

どうすればいいのか。『ドーナツ経済学が世界を救う 人類と地球のためのパラダイムシフト』(ケイト・ラワース)の示す解決の方向性を見てみよう。


では、どうすれば成長依存を克服し、低成長またはゼロ成長の経済を財政的に無理のないものに出来るのか?

 第一には、税の目的を描き直し、北欧諸国で成功しているような高負担高福祉タイプの税制への社会的コンセンサスを醸成すること。その際は、言語フレームの専門家ジョージ・レイコフのアドバイスを忘れず、言葉の選択に気を配りたい。「減税」には反論せず、もっぱら「公正な税」を訴えるのが賢明だ。同じように、公共の「支出」という言葉は、反対派によってしばしば無駄遣いを思い起こさせる言葉として使われている。それも公共の「投資」と言えば、質の高い学校教育や、便利な公共交通など、みんなの幸せを指させる公共財に意識を向けられる。

 第二には、非道な税対策を禁止して、税の抜け穴や、租税回避地の利用や、利益移転や、多くの世界的な大富豪や大企業――アマゾンからザラまで大富豪――が微々たる税しか納めないですむ優遇措置を許さないこと。世界の租税回避地には富裕な個人によって少なくとも18兆5000億ドルが隠されている。これは一年間で1560億ドルの税収が失われていることを意味する。それだけの税収があれば、極度の貧困を2回以上、世界から一掃出来る。同時に、多国籍企業は毎年、およそ6600億ドルの収益を、ほとんど税金のかからないオランダ、アイルランド、バミューダ、ルクセンブルクに移している。このような問題の是正に取り組む世界的な団体もある。そのひとつ、公正な税のための世界同盟(グローバル・アライアンス・フォー・タックス・ジャスティスhttps://www.globaltaxjustice.org/)は、企業の透明性や説明責任の向上、国際課税の公正化、国内における累進税制の強化を求める運動を世界各地で展開している。

 第三には、個人、法人どちらへの課税も、収入への課税から、蓄積された富――不動産や金融資産など――への課税に切り替えること。そうすることで、必要な税収を確保する上でGDPの成長が果たしている役割を小さく出来る。当然、このような税制改革にはただちに企業が抵抗し、ロビー活動を繰り広げ、国の無能さや腐敗をあげつらうだろう。ここで重要になるのが、市民の参加だ。国に責任を果たさせる民主主義を守り、促進することに、市民が積極的に関わることが求められる。

 いかがだったろうか?

 私は、ラワースがいう、租税回避地へ利益を逃して税金を払わないようにしている「多国籍企業」の1つであるアドビのサブスクリプションで年間数万円を払っているけれども、カードの利用明細には次のように記載されている。「ADOBE  PRODUCTS IRELAND 1058.00換算レート/1.0000円」 アドビは法人税負担=コストであるから、コストを少なくすれば利用者にも還元出来るとか言うに違いない。まあそれは一面的であると言うことだ。

 緊縮財政が――ちなみにわたしがまずもって貧者であり弱者である。当事者としてこの言葉を使うが――貧者・弱者を視野狭窄に陥れ、その結果、弱者は緊縮財政をむしろ擁護するようなことまでSNSなどで言い始めることもある。そのことは政府はお見通しでほくそ笑んでいるのかもしれない(それは分からない)。

 貧困問題に詳しい社会学者、西澤晃彦によれば、貧しいとき人間は自らの食費を削ってでも、承認欲求を満たそうとすると言う。SNSでは貧者も、富める者も身分を明らかにしないままで、簡便にこの承認欲求を満たすことが、出来はする。しかし、ここで満たされた市民の欲求は、本来もっと別の活動で発散されるべきものだったに違いない。それをむずかしくしているのは、もちろん緊縮財政という誤った政策を政府が採り続けるせいである。そしてその政策を支えているのは、この本で指摘されている、地球環境にも人々のつながりや幸福にも無関心で有害でさえある、誤った成長神話を唱え続ける経済学徒たちなのかもしれない。

 ケイト・ラワースの思考の視座にひとりでも多くの人が到達し、自ら活動をはじめることを願いながら私は私でやる。

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