「いまは」ベーシックインカムしかない

 タイトル変更した。2020年は新型コロナウイルス禍で竹中平蔵さんなどがベーシックインカムをいいだしたり、またマスメディアもこぞって(エコノミスト誌をはじめ)ベーシックインカムを特集したりしたため、だいぶ人口に膾炙してきたと私は思っている。

デジタル庁は、国民の銀行口座や所得をマイナンバーという一意の番号にヒモ付けて政府が把握し、最低生活費に満たない所得しかない人の口座へ自動的に送金するインフラ構築も視野に、今年の春爆誕する。もちろん、ある意味これはベーシックインカム――最終的にそうした物を目指すことが出来ることは言を待たない。

世界でも2020年は数々のベーシックインカムの社会的実証実験が行われた。コロナの対応のためにスペイン政府はいち早くベーシックインカム導入を政府が表明した(上手くいっていない、表明したりウソつくのは政府の得意技)。他にもいろいろな取り組みが行われているので、最新のベーシックインカムの動きは、アクティブなBasic Income Earth Networkのウェブサイト見てもらうといい。

そもそも1987年にイギリスの首相マーガレットサッチャーが、社会というものはありませんという新自由主義の「骨」となる発言をしたところから、世界は新自由主義に覆われることとなった。しかしいま明らかになっているのは、結局新自由主義というのは、単にポンコツ資本主義を「延命」こそ出来たかも知れないが、もうそれも効かなくなってきている残念な真実である。結局人もイデオロギーも絶対に死ぬしかない。世界は常に変わっている。資本主義はもう死の床についている。こういうことからベーシックインカムのような議論は1つの巻き返しの一端を担う考え方としてずっとあったし去年それが過去最高潮に盛り上がったわけだ。

ところで、日本ではベーシックインカムは見るも無惨な状態に陥っていると私は思っているがどういうことか? 詳しく解説したい。

2021年になり、ベーシックインカムの旗色は、かなり悪くなっているように見える。決定的だったのは、世間の嫌われ者たち(竹中平蔵、ホリエモンら)や、前澤お金配りおじさんのような「キワモノ」がベーシックインカムを口にしたからである。ああいうおかしな連中が言うベーシックインカム、なんか気に入らないぞ。絶対ダメに違いない。やっぱり財源が無いじゃないか、ウソじゃないか! それに、(気に入らない連中にも)政府がが金(元はオレの金)を配るなんて絶対に許せない!キーッ!! こういうふうに人々の思考回路はあたりまえにまわる。これは、認知的不協和と心理学的に説明される。詳しく説明しよう。

ベーシックインカム理論が認知的不協和の解消を通じて否定されるメカニズムはこうだ。分かりやすくするために、ひとりの人間、オッサン、特に、いまの経済失政を最も被っていないとされる世代の57歳男性を例に説明しよう。もともと57歳オッサンは、受験競争をかいくぐってハーレム化した大学生活を謳歌したあと、バブルで、就職活動もろくすっぽ体験せず大企業に入れ、家も子どもも専業主婦の奥さんもその愛くるしいペットもゲットしてあと数年で年金生活に入ろうとしている。彼の認識は自分は努力してがんばってきたから、他の人も同じように頑張れるはずだし、ニッポンてホント最高だなー、オレもラッキーだなー、定年後は絶対趣味のゴルフと麻雀いっぱいやろーといったように、自己肯定感で脳内は満たされ、希望に満ち溢れている。こういう57歳オッサンは日本に多分、60万人はいるだろう。

この57歳オッサンからすると、政府(政府は金がなくて、社会保障費などのために借金で首が回らなくなっているという認識=緊縮財政脳という)が金を配る?ベーシックインカム?あり得ないだろうそれというのがデフォルトの認知である(彼が常識と信じて疑わない認識のこと)。

57歳オッサンがベーシックインカム論を聞いたとき必ず彼の脳内に不快感が生じる。つまり、自分の考えや思い込み(ベーシックインカムなんてダメだ)と異なる認知(資本主義オワコンだからベーシックインカムしかない!)が脳に入ってきたときに、2つの矛盾する認知が脳内にあることとなり、その状態は不快感の原因になるということだ。

ここは丁寧に説明したい。まずひとりのおっさんがいる。そしてオッサンは、2つの矛盾する認知を持つに至った。その段階での彼の脳内はこうだ。

  • ベーシックインカムなんてダメ
  • ベーシックインカムしかない

この2つの認知はあきらかに矛盾している。トレードオフになっている。こういう矛盾した認知が一個の脳内にあるときに、彼は不愉快になる。この不快感の正体こそ、心理学者が「認知的不協和」と命名したそれだ。オッサンは、オッサンに限らずあらゆる動物は不快なことは取り除こうとする。そして、その手段はもっともラクですぐに出来る方法が選ばれる。その彼の方法とは、ベーシックインカムは不愉快だからそれを否定するいろんなメディアの言説を集めるという方法に他ならない。彼は手近にある新聞雑誌の、なるべくベーシックインカムに否定的な記事を探して読むかも知れない。また、インターネットで検索するかも知れない。

ベーシックインカム ダメ

ベーシックインカム 働かなくなる

ベーシックインカム 国家破たん

こういうふうにググればいくらでも彼の認知的不協和を解消する「ネタ」が手に入る。彼の不快感が消えるまでに必要な時間はほんの数分だ。新聞雑誌は次の資源ゴミ回収日に持ち去られる。ネットのキャッシュは消える。このあと彼の認知システムにはベーシックインカムはダメ、以外の物が入ってこないようなフィルターが構築される(養老孟司はこのフィルターを「バカの壁」と命名した)。

ベーシックインカムしかないと思っているこの私でさえ、ベーシックインカムを否定することはウンコをするくらい簡単なことだ。いってしまえば、野菜は健康にいいがもさもさして冷たいし食べたくない、だから肉を食うんだ、ステーキと御飯持ってこーいむしゃむしゃあー太った、みたいな感じで、ベーシックインカムを否定しにかかってくるのが57歳オッサンがベーシックインカムを聞いたときに示すデフォルトの態度である。

まあこのように、ベーシックインカムはスッカリ嫌われて残念な議論として色あせて着つつある。この現状に危機感を持った私は、タイトル変更に踏み切った次第だ。

宇沢弘文さんの社会的共通資本の議論をぜひしっかりここで勉強したい。哲学系ユーチューバーのじゅんちゃんが教えてくれた。ベーシックインカム的なお金の使い方だと、やっぱり地球的規模の問題への取り組みが減衰する危険があるというのが最大のポイントだろう。

いま私たち人類は、地球規模で問題を、かつて無い速さと正確さで察知することが出来る。いろいろなセンサーをあらゆる場所に埋め込んで、大気や地下のプレートの動き、あらゆる場所の温度、大気中の有害物質の量などをリアルタイムに把握している。そしてそれらのデータをコンピュータにぶっ込んでベイズ推計してこのあとどうなるかという、ある種の未来予測が可能になってきている。

今のところ、このプラネットの未来は暗い。真っ暗だ。

ヤバいぞ地球。

私の家計もヤバいが、地球はもっとヤバい。

こういう理由で、とりあえずはベーシックインカムが必要だが、最終的にはベーシックサービスを目指すと。で、金は全部このプラネットの持続のためにみんな協力して働くために使わないと本当に未来がないと言うことが分かった。

子どもをいくら増やしてベーシックインカムで育てても、肝心のこのプラネットがボロボロだったらどうしようもないだろう。

というわけで、たしかに「いまは」ベーシックインカムしかない。これは間違いない。しかしそれは決してゴールではなく、いまただちにやるべき、暫定的な措置にとどまる。これがタイトルにそのことを意味する「いまは」を付けた次第だ。

57歳オッサンは確かに、昨年は一瞬にしてベーシックインカムダメの壁を構築し脳内の不快感を取り除くことには成功した。野菜嫌いの彼は野菜は身体にいいという言説を「やかましいわ」とばかりに無視し、いまも大好きな肉を食い続けている。野菜などくだらないしダメだと「断じた」彼の身体にこのときガン細胞が生まれた。彼の身体はこのガン細胞により、本来まっとう出来る寿命のはるか手前で終焉を迎えるだろう。チーン

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